介護保険とは|要介護認定の流れと手続きの手順を解説!

誰しも介護は必要になりますが、実際に介護が必要になった時に「どこで」「どうやって」手続きをすれば良いのか、知らない人は多いと思います。この記事では、そもそも介護保険とはどのような保険か、実際に介護が必要になったらどのように申請すれば良いかを解説します。

親の介護が必要になった際、スムーズに手続きを終えられるようしっかりと知識をつけておきましょう。
個別ケースの相談をされたい方は、以下のボタンよりお申込みください。

目次

介護保険とは

介護保険制度は、地方自治体が運営する社会保険制度です。
65歳以上の高齢者、または40歳から64歳の特定疾患を持つ人が、寝たきりや認知症など介護・支援が必要な状態になった時に利用できるサービスを提供しています。

この制度の目的は、利用者が自立した生活を送れるよう支援することです。介護が必要な状態になるのを予防するためのサービスもあります。

40歳以上の方は、介護保険料を毎月支払うこととなっており、保険料は介護保険サービスを運営していくための大切な財源です。

要介護認定区分と認定までの手順

要介護認定には「要支援」「要介護」の2つの区分があり、区分によって受けられるサービスが異なります。介護が必要と感じたらまず認定手続きを行いましょう。

要介護認定の流れと手順

要介護の認定を受けたい場合は、以下の手順で申請が必要です。

【要介護認定を受けるための手順】
①市区町村にある地域包括支援センターに相談する。
②認定調査員が訪問し、生活状況や健康状態について調査を行う。
③主治医による意見書から、健康状態や介護が必要とされる理由を確認される。
④調査結果と意見書をもとに、介護保険審査会で審査が行われる。
⑤申請者に対して約30日で結果が通知される。

要介護または要支援と認定された後は、「介護(介護予防)サービス計画書」を作成し、プランに沿った支援を受けられるようになります。今後の過ごし方を決める大切な計画書ですが、作成費は保険料から支払われるので安心してください。

地域包括支援センターとは

地域包括支援センターとは、市町村が主体となり設置された、住民の健康保持及び生活安定のため必要な援助を行う施設のことです。
主任介護支援専門員(主任ケアマネージャー)、社会福祉士、保健師が配置されており、健康に関するちょっとした悩みから病気や介護、金銭的な相談や虐待まで多くの問題を相談できます。

介護認定の申請は市区町村の役所窓口でも可能ですが、実際は行っても地域包括支援センターを案内される場合が少なくありません。市区町村の役所では「申請者に介護が必要か」という判断ができないためです。

認定を受けたい本人が入院中などの事情で直接手続きできない場合も相談にのってくれます。地域包括支援センターは、公的な施設や病院の中に設置されている場合もあるので、場所が分からない場合は市区町村の窓口へお問い合わせください。

要介護認定とは

介護保険制度では、介護の必要度合いに応じたサービスを受けることができます。

要支援は比較的軽度の支援が必要な人向けで、要介護はより高度な介護が必要な人向けの区分です。要介護はさらに1から5までのレベルに細分化され、介護の必要度に応じてサービスが提供されます。

要介護認定の基準とは

要介護認定の基準は「日常生活の自立度」に基づいています。

具体的には、食事、入浴、排せつ、着替え、移動などの日常生活活動(ADL)の自立度や、認知症の状態が評価の基準です。この評価により、個々の状態に適した介護のレベルが決定されます。

介護認定を申請する手続きの注意点

介護認定は、申請すれば誰でも認定されるものではありません。申請時の注意点をお伝えします。

・介護認定が申請できるか確認する
・要介護認定の調査は家族の立ち合いが重要
・認定が厳しくなっていることを理解しておく

介護認定が申請できるか確認する

介護認定を申請できるのは、日常生活において介護や支援が必要とされる65歳以上の高齢者、または40歳以上65歳未満で特定の疾病を持つ人です。これにより、適切な介護サービスの提供が可能となります。

要介護認定の調査は家族の立ち合いが重要

認定調査員が訪問した際に、症状の全てが現れるとは限りません。

本人が「介護はいらない」と言い張ったり、調査員の前ではいつもと違って動きが機敏になるケースがあります。普段どのような時に手伝っているかなど、家族からの意見はとても大切なので、調査時は同席するようにしましょう。

また、伝え忘れがないようメモに残しておくことも大切です。同席できない家族がいる場合は特に、事前に伝えるべきことを書き留めておく必要があります。

主治医の意見書も調査の対象なので、ありもしない症状を伝える、など嘘をつくのはやめましょう。

認定が厳しくなっていることを理解しておく

介護保険の認定は、以前と比較すると受けにくくなっています。

介護保険のサービス利用者は増えていますが、財源は市区町村です。特に高齢化が進む地域では財源の確保が厳しく、介護費の支出をおさえるため認定基準が厳しくなっています。高齢者が増加し続けている日本の社会背景を考えると、今後ますます判定が難しくなる可能性もあるでしょう。

介護保険を利用すると、介護費用の自己負担額は1~3割程度。人口が減少している地方にとっては重い負担です。介護サービスは必要ですが、認定者数の増加は自治体にとって厳しい課題と言えます。

介護認定のメリットとデメリット

介護認定を受けることのメリットとデメリットを解説します。

要介護認定のメリット

【利用できるサービスの一例】
・介護サービスの利用に関する相談
・ケアプランの作成
・自宅で受けられる家事援助等サービス
・施設などを日帰りで利用するサービス
・施設などで長期間又は短期間受けられる宿泊サービス
・訪問・通い・宿泊を組み合わせて受けられるサービス
・福祉用具の利用にかかるサービス

要介護認定を受けると、上記のような介護サービスの利用が可能です。

個々にケアプランを作成し、それに沿ったサービスが受けられるため、生活の質の向上につながります。
さらに、介護費用の一部が公的支援によってカバーされるので、経済的負担が軽減されます。

認定された区分が「要介護」か「要支援」で受けられるサービスは異なるので注意してください。

要介護認定のデメリット

認定されるまでのプロセスが煩雑で時間がかかる。
介護サービスの利用には自己負担が伴うため、経済的な計画が必要。

要介護認定の手続きには時間がかかり、手続きも煩雑です。
また、介護サービスの費用を全額負担してくれるものではないため、経済的な自己負担が伴います。

「介護保険があるから大丈夫」などと楽観視せず、早いうちから介護費用として計画的な貯蓄を行いましょう。介護のいらない健康な体を維持することも大切です。

要支援と要介護の違い

要支援と要介護の違いは、介護が必要な程度にあります。これにより、どのような介護サービスが利用できるかが決まります。

要支援と要介護の区分

要支援は1~2,要介護は1~5に分類されます。

要支援1:一人で日常生活を送れるが買い物や家事などに支援を必要とする。
要支援2:要支援1と比べて支援を必要とするサポートが広い。
要介護1:要支援2よりも身体能力や思考力低下がみられて日常的な介護が必要。
要介護2:食事や排せつなどは自分でできるが生活全般で見守りや介助が必要。
要介護3:常時介護の必要性があり、日常生活の大部分でサポートが必要。
要介護4:介助がなければ日常生活を送れない。
要介護5:重度の介護が必要であり、コミュニケーションを取ることも困難。寝たきりなど。

これらの分類により介護が必要な人々は、自分の状態に最適なサポートとケアを受けられるのです。

要支援1と要支援2

要支援とは、基本的な日常生活の動作は自力で行えるが、負担の大きい掃除や買い物などの家事において支援が必要な状態をいいます。

例えば、以下のようなケースです。

【要支援1の例】
・料理はできるが、一人での買い物が困難
・歩行は可能だが、階段の昇降が不安定 など

【要支援2の例】
・要支援1の状態に加えて、入浴や着替えなどの基本動作においても部分的な介助が必要。
・認知機能の軽度な低下がみられ、例えば薬の服用などにサポートが必要。

自立した生活が送れるよう「介護予防サービス」を受けることができ、介護を受けず自力で生活できることを目指します。

要介護1から要介護5

要介護は、日常生活における広範囲の支援が必要な人々への認定です。レベル1から5まであり、レベルが上がるにつれて、必要とされる介護の量や質が高くなります。

要介護の認定を受ける人は日常的な介護が必要で、家族への負担も大きいです。要支援とは異なり、特別養護老人ホームなどの施設利用に対する支援サービスが受けられるので、経済的にも負担軽減が期待できます。(特別養護老人ホームの利用は要介護3以上必要)

その他、利用できる介護サービスの例として、訪問介護などの居宅サービス、夜間対応型訪問介護など地域密着型のサービスがあげられます。

介護サービスの紹介

介護サービスは、高齢者や障がいを持つ人々が日常生活をより快適に送るために不可欠です。以下、特に覚えておくべき介護サービスの種類を3つ紹介します。

・特定入所者介護サービス費
・高額介護サービス費
・高額医療・高額介護合算制度

特定入所者介護サービス費

特定入所者介護サービス費は、介護施設に入所する低所得者(所得や資産等が一定以下)の食費や居住費を軽減してくれる制度です。

入所者は、介護サービス費の1~3割と、食費や居住費が必要です。しかし、特定入所者介護サービス費を利用すると、所得に応じた自己負担限度額の範囲内で食費と居住費の負担が軽減できます。限度額を超える金額に関して支払う必要がなくなるので、経済的な不安を抱える方も安心して介護施設へ入所できるでしょう。

ただし、虚偽の申告をするとペナルティがあります。受け取った金額の返済に加えて最大2倍の罰金が科されるため、申告は正直に行ってください。

高額介護サービス費

高額介護サービス費とは、利用者が一カ月のうち支払った介護費用負担額に対し、限度額を超えた分が払い戻される制度です。

一般的な所得の方の場合、負担限度額は月額44,400円です。負担限度額は個人や世帯の所得に応じて異なるので、詳細は厚生労働省のHPを参考にしてください。

支給を受けるためには市区町村への申請が必要です。老人ホームなどの居住費や食費、差額ベッド代、生活費などは含まれないことに注意してください。在宅介護サービスを受けている方の住宅改修費や福祉用具購入費についてもサービス費の支給対象にはなりません。

高額医療・高額介護合算制度

高額医療・高額介護合算制度は、同じ世帯内で、医療保険と介護保険両方に自己負担が生じた場合、合算後の負担額が軽減される制度です。

1年のうちに支払った合計額が限度額を超えた場合、申請をすると超えた分が支給されます。これによって、医療保険と介護保険のどちらも利用する世帯の自己負担額を軽減できる仕組みです。

限度額は年額限56万円を基本とし、被保険者の所得や年齢区分ごとに細かく設定されています。

このように、介護保険の被保険者は安心して過ごせるサービスが用意されています。申請を忘れず行い、経済的負担が軽くなるよう制度を理解しておきましょう。

要介護認定の再調査申請

要介護認定の認定結果に不満があった場合、再調査を依頼できます。

不服申し立て(審査請求)

不服申し立て(審査請求)とは、市区町村が行った要介護認定に対し取り消しを求める手続きです。認定結果を受け取った翌日から60日以内に行う必要があります。

申し立ての申請先は、各都道府県が設置している「介護保険審査会」です。申し立てが妥当と判断されれば、要介護認定が取り消され、あらためて審査を行えるようになります。

ただし、ただでさえ時間のかかる要介護認定の申請をもう一度する必要があるのが難点です。申請のタイミングによってはさらに時間がかかるので、急ぐ場合は「区分変更申請」の手続きを検討してください。

区分変更申請

区分変更申請とは、ケガや病気により身体の状態が変わった際、要介護認定区分の見直しを申請する手続きです。

更新前でも行うことができ、1カ月程度で審査結果がわかります。そのため、介護認定結果に不満があった場合、時間のかかる不服申し立て(審査請求)の代わりに行う人もいます。

要介護認定の有効期限と更新手続き

要介護認定は有効期限が設けられており、更新手続きが必要です。時間の経過とともに被保険者の状態は変化する可能性があり、定期的な審査が必要だからです。

初回の有効期限は原則6カ月、2回目以降は12カ月(1年)とされています。被保険者の状態など、市区町村の判断により有効期限が変わる場合もあるので注意してください。

更新は自動でされないため、期限が到来する更新手続きが必要です。有効期限の60日前に更新手続きのはがきが届くので、忘れないようにしましょう。忘れて期限がきれると、介護保険の給付が受けられなくなり、介護費用を全額自分で負担することになってしまいます。

被保険者の状態に変化があった場合は、更新時期を待たずに再調査を申請してください。

介護にかかる期間と費用

生命保険文化センターが令和3年に行った調査によると、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、一時的な費用の合計が74万円。月々の費用は平均8.3万円でした。

一時的な費用とは、住宅のリフォームや介護用ベッドの購入費などを指します。
自宅で行う在宅介護と、介護施設に入居した場合の費用を比較すると、在宅は平均4.8万円、施設は平均12.2万円となっています。

介護を行った期間は平均61.1カ月(5年1カ月)ですが、介護期間が4年を超えた人の割合は約5割。月々の費用を考えると経済的負担は決して軽くありません。さらに、入居費の低い施設は入居希望者が多く、なかなか利用できない問題もあります。

介護保険の知識を深めて、安心の未来を準備しよう!

この記事では、介護保険のしくみや要介護認定の手続きについてお伝えしました。親の介護が必要になった時に慌てることがないよう、しっかり理解しておきましょう。基礎知識を身に着けることで、老後に必要な資金についても見通しを立てることができます。

しかし、何歳まで生きるか分からない中で、老後のライフプランを考えることは難しいです。介護に関する悩みや疑問も人によって異なります。介護福祉士として働いていた経験があるからこそお伝えできる、具体的なアドバイスもあわせて知りたい方はぜひご相談ください。早期の準備と適切な対策で、安心できる未来を一緒に作りましょう。

この記事が、あなたや大切な人の介護に対する不安を少しでも和らげ、前向きな一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

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この記事を書いた人

保有資格:1級DCプランナー / 2級ファイナンシャル・プランニング技能士 / AFP / 介護福祉士
経  歴:40歳を転機に『お金』について学び始める。介護業界に約9年間従事した経験や、自分自身が家計を立て直した実績を基に提案を行っている。そのほか、物販事業や出張買取事業も兼務。

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